薬の服用について

不規則な服用

 しばしば、処方箋で指示された通りの服用を守れない事例に遭遇します。

 たとえば、「1日三回、毎食後」の場合、「朝食ヌキで2食の習慣だから」「昼は飲めない(飲ませられない)から」と服用を2回にしてしまう、時には2回分まとめて飲んで(飲ませて!)、無理に辻褄をにあわせる、また極端な場合は「ときどき(思い出したときに(?))飲む」という事例がしばしばです。

 薬の分服回数というのは、薬剤それぞれの体内吸収や効果持続・血中濃度維持時間等を根拠に定められています。それが多くの薬で設定されている「1日3回」服用なのです。

 ある種類のものは、もともと1回や2回分服で済みますが、なんでもかんでもそのような剤型になっているわけではありません。

 もとより、不規則・不健康な生活リズムにあればこそ、病気が治りにくくなるのはいうまでもありません。それにつられて、服用も不規則になれば、薬効も十分に出ず、尚更に治りが悪くなるのは自明です。

 本末転倒して、「無理を通すために」薬を飲む、薬を飲めば「無理が利く」かのように思われたら元も子もありません。

 具合が悪いときは無理をしない、体を少しでも休めるよう心がける、というのが薬を飲む以前の常識です。

 その上で薬の力を借りて、より早く回復を目指す、というのが、薬を飲む本来の目的ではないでしょうか。

 この薬効をしっかり得るために、規定通りの服用が不可欠なのです。

 それでも「忙しくて」とか「(患児を)預けているから」規則的には飲めない、飲ませられない、と都合を言われる方が後を絶ちません。医師に向かってそのような言い訳をされても、病気自体がそれを分かってくれるわけではないのです。

「薬をが終わる頃に再診を」

 当院では、「薬の終わる頃(を目安)に」再来院するようしばしば指示を致します。

 これは、来院の時間帯などによって、現実には初回の服用が昼からになったり、夜からになったり、ということもあって、飲みきる時期が、日付の上で1日くらいは前後する可能性があります。

 また、それぞれ多忙な方々の中、確実に飲みきった時点で確実に来院できるとも限りません。加えて、当院の休診日との兼ね合いもあり、「1日遅れ」で来院する、あるいは都合があわなくて「1日早め」に来院する、というくらいのことは、むしろ全くないのが不思議でしょう。ですから、そのへんの日にちで受診されれば構いません、と言っているつもりなのです。

 一方、疾患によってはたとえば3日程度で状態の変化があり得ると見込まれれば、その時期の所見を診察し、効果判定する必要があり、処方日数もそれくらいにします。

 あるいは、コマメに処置を繰り返しながら、管理していかざるを得ないケースも少なくありません。その場合にも、処方薬の終わる頃を目安に再来院を促すことがあります。

 3日後としたら3日後で、きっちり来院できる人ばかりであれば、無論それに越したことはありません。が、これが少々ズレたところで、1日前後程度でしたら、まず通常は大きな問題はありません。

 これらのことを含んで、「薬が終わる(前後の)時期」で来院するようにお話ししているつもりでいるわけです。

 処方の日数が、再診に来る時期の目安、と考えてくださっても結構です。

もちろん、症状に著しい変化がある場合は、この限りではありません。適宜具合を見せにきて下さい。

ところが!!

 ところが、先に挙げたような、不規則服用の場合、「3日分」を1週間とか、極端な場合、1週間分の薬を2週間くらいかけて「飲んだり飲まなかったり」し、ようやく最後の薬が「終わった」から、と来院するという「解釈」を持つ方が時にいられます。

 あるいは、決められた期間はきっちり飲むけれど、その後何日間も受診しないで、「ずっと治ってませんでした、楽になってませんでした」。(・・・このときは「半端に効いて」、また悪くなっていることが少なくないのです。)

 このような通院では、まともな薬効を期待できるはずもなく、病状チェックもできません。抗生物質などは、不規則に服用されたりしたら、却って効かなくなる恐れだってあります。

 自身を守るためにも、指示通りの服用をされることを切に望みます。