難 聴
「難聴」とは、聞こえ「にくい」状態を指します。
「少々聞こえにくい」から、「全く聞こえない」まで、程度はまちまちです。
しばしば、「難聴といわれたけど聞こえますよ」と怪訝そうにする方がありますが、
「難聴」という言葉を、「全く聞こえない、という『病気』」として誤認されていることが少なくないようです。
たとえば、「(中耳炎にかかると)、難聴になってしまいますか?」と聞かれても答えようがありません。
中耳炎なら急性でも慢性でも、ある程度は聴力が落ちて当然です。
「中耳炎にかかった今、聞こえにくい状態」は、すなわち「難聴」です。
問題は、現在聴力が障害されている(=難聴)か、それが直るものか否か、進行するものか、
ということが重要なのです。
聴力レベルの低下した状態を意味するだけであり、
「難聴」という病気があるのではありません。
様々な病気としては、○○性難聴などと表現されるものです。
感音性難聴 「音センサーの障害」 |
・音を感じ取るセンサー「内耳細胞」の機能低下による難聴です。一度壊れてしまうと再生しない性質の細胞のため、老化による劣化だけでも徐々に聴力は落ちるものです(「老人性難聴」)。何らかの病的原因で内耳細胞の障害が生じれば、その分難聴(感音性障害)は残ってしまいます。 ・感音性難聴では、音が小さく聞こえる=「音量」が低く聞こえるだけでなく、「音質」が悪く聞こえるようになってしまいます。これがセンサーが少なくなっているための症状と考えてください。 さらには、大きい音も聞き入れきれなくなり、正常の場合にはまだ許容範囲のボリュームでも、感音性難聴では「うるさく」聞こえます。「耳が遠いのに、音をうるさがる」という一見矛盾した現象は、こういう理由によります。 感音性難聴の聞こえ方は、たとえば古くなったオーディオスピーカの音を考えてみればわかりやすいでしょう。音がしているのはわかるのに、きれいな音、はっきりした言葉として聞こえにくいという状態です。少々ボリュームが弱いとまるで聞こえない、しかし、ボリュームをすこし上げると、いきなり「音が割れ」てうるさく耳障りになります。 ・残念ながら、急性の感音性難聴の早期を除き、聴力低下を「治療する方法」はありません。原則として補聴器(→こちらへ)での聴力サポートで対策を立てるしかありません。 ・このとき、補聴器の音量を上げすぎると、上記の通り、耳として受け止めきれる「音量」の限界が下がっているので、「うるさく」感じやすくなってしまいます。「少し物足りない」音量レベルが至適音量と考えてください。 |
伝音性難聴 「音の伝達路の障害」 |
・外界から、内耳という音センサーまでの音の伝達に障害があるための難聴です。耳垢が詰まるだけでも、耳栓をするだけでも、「伝音性」の聴力低下になるわけです。鼓膜が破れただけでも、音が中へ伝わりにくいので伝音性難聴になります。 ・臨床的に問題とするのは鼓膜・耳小骨の病気の場合です。これには治療の余地が大いにあります。内耳がしっかりさえしていれば、音の伝導路を復活させることで理論的には聴力改善の可能性を含んでいるのです。原則的には手術による治療になります。 |
混合性難聴 | 伝音性・感音性がさまざまな程度で混在する状態。伝音性障害の成分に限っては、回復の余地があります。 |
耳鳴り |
聴力低下があると、その原因を問わず、「耳鳴り」は生じやすいものなのです。 それはともかくとして、聴力が何らかの理由で悪くなると、聞こえるようになってしまうのが耳鳴りなのです。聴力低下と耳鳴には表裏一体に近いものがあります。 つまり、「耳鳴から解放されるには、聴力の改善を図るしかない」という理屈になります。 正常聴力でも、生理的に一時的な耳鳴が起こることがあるのはほとんどの方に経験があるでしょう。正常でも、一過性の誤作動を起こすことはあります。これが「正常聴力者での耳鳴」です。 さらに伝音性難聴では、耳栓・耳垢による外耳道栓塞や他の病的な伝音障害により、外界の音が遠ざかるため、普段は気づかないような耳鳴りを自覚するようになることがあるのです。 厄介なのは、感音性難聴により慢性的に続く耳鳴です。先に挙げたように、感音性難聴は、急性の一部を除き、治らないからです。内耳の老化現象でも感音性聴力低下が起こります。 「耳鳴を治す薬か何かはないのか」とよく尋ねられますが、聴力の治療についてなら、難聴の質によってはあるものの、耳鳴だけ何とかするという直接的な方法は、残念ながらありません。 感音性難聴では、ダメージの溜まった内耳細胞が「誤作動」を起こしている、とでもイメージしてください。 再生できない細胞の障害ですから、聴力は回復できず、耳鳴も治すことはできないのです。
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増悪因子 |
耳鳴りが、何か良からぬものではないかという不安感や、常に気にしてしまう精神状態が、「自覚症状」をひどくしてしまいます。 生活騒音など、今まではなんでもなくいられたものが、ある時何かのきっかけで気になるようになると、以来ずっと気になってしょうがない、という事例がよくあると思います。耳鳴りに対しても同じようなことが言えます。 |
耳鳴の変化(増悪) |
本人の「自覚」自体の変化と、実際に聴力が変化したために耳鳴が出現したり元々の耳鳴りが変化したりということがあります。 後者の場合は、聴力に関して何らかの病的変化を来している可能性もあり、適宜診察を要します。 |