ノドが腫れる?

「どうしました?」「ノドが "腫れ" ました」

 「咽頭炎」に罹った患者さんとの間でしばしばある応答ですが、本当にノドが「腫れる」ことはほとんどありません。

 「痛い」ことで、飲み込むときにノドが狭く感じること自体が「腫れた」ように感じるのでしょう。実際に咽頭炎の所見は、発赤を起こしてはいても、よっぽどでない限り、「腫れ」てはいません。

 本当にノドの粘膜が腫れたらたいへんな事態です。耳鼻科医が実際にそこを見て「腫れている」という状態は、粘膜下に膿瘍形成を起こす寸前か、すでに膿瘍化しているとか、あるいは炎症・アレルギーや熱傷など、何らかの原因によって咽頭や喉頭周囲が粘膜浮腫を起こしたりしている状態です。放置などして進行すると、気道狭窄など危険な状態に至ることもあります。

扁桃腺が腫れる?

・・・扁桃肥大との混同、勘違い

 俗に「扁桃というのは誤りで、正確には「扁桃」といいますが、扁桃が炎症を起こすと「扁桃炎」となります。典型的には、表面に膿栓の付着を伴う炎症所見がみられます。

 よく「扁桃腺が腫れた」と訴えたり、そのような「指摘を受けて」相談に来る方がありますが、扁桃自体が本当に見た目に「腫れ上がる」ことは、ほとんどないか、あっても通常は軽微です。  

 扁桃組織は、幼児期から学童期にかけて、生理的に「肥大」しています。これは全く異常ではありません。

 肥大というのは、文字通り「サイズ」が大きいということで、組織自体が大きい状態で、短時日で大きくなったり小さくなったりするものではありません。

 一方、「腫れる」、言い換えると「腫脹する」という現象は、例えば炎症や何らかの病的原因によって、「膨れ上がる」状態です。(コムズカシク言えば、炎症に誘導されて毛細血管が開き、細胞の隙間に体液が増えた、"水太り"状態です。打撲したり、ハチに刺されたり、もちろん、皮膚が化膿したときなどがこの状態です。)

 ほとんどの場合、「扁桃腺が腫れている」というのはこの「肥大」を指して、そう扱われてしまっています。ノドが痛い時に限って、よくよく覗き込むから、普段から"おとなしく"そこにいた扁桃を目にして、「腫れた」と思ったりしてしまうのです。

 また、そういうとき以外に医者にノドを見せることはまず普通はないので、往々にして「ではノドを見ましょう、ああ、腫れてますね。」とされてしまうのです。本当は普段からある程度「大きい」はずだったのに。

 こうなると後が問題です。ひとたび、独断なり、指摘されるなりで「腫れた」としてしまうために、痛みも消え、体の具合自体も良くなっているにも関わらず、「腫れが引かない」。

 とくに小さい子の場合、親御さんの目には良いも悪いも判断しかねるわけですし、「いつまでも"治らない"、何か悪い炎症でも起こしているのか?」という不安をいたずらに煽ることになってしまいます。

 耳鼻科に来て、「何のことはない、初めから腫れるほどの炎症は起こしていなかったのだ」、と初めて知ることになるのです。

 ただし、頚部リンパ節が炎症で腫れることがありますが、扁桃もリンパ組織なので、そのような、ある種の炎症の場合には腫れ上がることがあります。

ノドの痛み=扁桃炎?

 患者さんが、「ノドが痛い」ことを「扁桃腺を起こした」という言葉で表現することがあります。

 おそらく、過去に「咽頭炎」と「扁桃炎」を区別されることもなく、「ノドが痛いのは『扁桃腺』」と扱われてきたからなのでしょう。(扁桃"腺"!、扁桃"腺"炎!!など然り)

 喉が腫れているのか、扁桃が炎症を起こしているのか、両者の見分け(もちろん併発も珍しくありませんが)と治療・管理は、耳鼻科が専門としています。

 ですから、「ノドが痛い」とさえ訴えてもらえれば十分なのです。腫れているのかどうかは耳鼻科医が、診察して判断いたします。